映画「ヴォイジャー」は宇宙版『蠅の王』?ストーリー比較。 感想と評価。
2022年3月25日から上映開始をしている映画『ヴォイジャー』(VOYAGER)
SF好きとしては映画館の宣伝で気になっていました。
ちらしのあおり文句は『人類の存亡を脅かす敵は無限に広がる宇宙にいるのか。それともー。』
それともーにつながる言葉は何なのかを読み解いてみましょう。
取り敢えず、パンフレットを売っていなくてショックでした!
映画のパンフレットというのは、海外ではなくて日本の文化みたいなものらしいです。
私はアメリカのニューヨークと中国の上海の映画館で映画をみたことがありますが、多分パンフレットは売っていなかった気がします。
もっとも海外で映画館というのは、レストランや服の店に入る以上にハードルが高いものがあって余裕がなかっただけって可能性も十分ありますが……。
今の私の語学力はかなり乏しいものですが、当時は7割くらい英語も中国語も聞き取れる自信がありました。
(まあ、しょぼいんですけど)
でも、分かったことは初見の映画で聞き取るにはそれなりのレベルが必要ということでした。。。。
そんでもって、『ヴォイジャー』のパンフレットは作ってないんですって!
「映画館でパンフを下さい」って言って、「ないんです」って申し訳なさそうに言われました。
そんなことあるんですね。初めてだと思います。
最近だとすぐに「アマゾンプライム」や「ネットフリックス」「U-NEXT」で観れるし映画館への来場者はこのコロナ禍でずいぶんと減っていることは予想されます。
だからってパンフがないなんて!
中学生の頃からパンフのコレクションを始めて、途中の空白を得て、ここ数年は連続してパンフを買ってたのに今回はないんです。ちょっと残念。
映画『ヴォイジャー』の評価は ★3.2です。(五段階評価)
この様な方にお勧めです。
・SFが好きな方(特に宇宙系)
・サスペンス映画が好きな方
・ニール・バーガー監督作品が好きな方(ダイバージェントの監督)
・リリー=ローズ・ディップ(ジョニー・デップの娘さんです)が気になる方
・タイ・シェリダン(レディ・プレイヤー1の主演俳優)が好きな方
・フィオン・ホワイトヘッド(ダンケルクのメインキャスト)が好きな方
本格SFって感じでもないんでその辺りを期待していると少し違うって感じるかも知れません。
正直、SF映画としては物足りないのですが、「蠅の王」を思い出し、再考察するきっかけになったという意味で3.2としました。
もっともこういう映画は結構好きな部類なんですけどね。
キャストとスタッフ
監督/ニール・バーガー 監督作品にSF映画の「ダイバージェント」があります。
セラ/ リリー=ローズ・ディップ
ジョニデことジョニー・デップとフランス人女優ヴァネッサ・パラディの間に生まれ、モデル業、女優としてのキャリアを積んでいます。
正統派美人ですよね。
ジョニデの娘さんってだけで興味が沸きました。もっとも本人は実力で評価して欲しいとは思いますが。
お母さんの若い頃に似ているのかな。
まあ、わたし一時期かなりジョニデ映画を見倒しましたからね。
言うまでもないけど、作品ごとに同じ人が扮していると思えないその演技力に惚れて!です。
クリストファー/タイ・シェリダン
スティーブン・スピルバーグ監督「レディ・プレイヤー1」の主演で注目を浴びました。
ザック/フィオン・ホワイトヘッド
「ダンケルク」で新人ながらメインキャストに抜擢されました。
リチャード/コリン・ファレル
アイルランド出身『タイガーランド』で評価されました。
『マイノリティ・リポート』、『S.W.A.T』、『マイアミ・バイス』、『トータル・リコール』、『ファンタスティックビーストと魔法使いの旅』、『THE BATMAN・ザ・バットマン』等出演映画はたくさんのしっかりとした演技力のベテラン俳優。
つい最近、『THE BATMAN』を見たのにコリン・ファレルとは気が付きませんでした。
ペンギン役です。
まだブログに載せてませんので、ちかぢか。
ストーリー(超あらすじ)
地球温暖化による飢饉が人類を襲い科学者たちは居住可能な惑星を探した。
そして2023年、可能性を秘めた惑星を発見し探査隊を派遣することになった。
宇宙船の名前はヒューマニタス号。
航行にかかる時間は86年。乗員はその為に人工授精により生まれ、訓練を受けた30人の子供達と教官であるリチャード。
子供たちは船内で成長して子供を育てる。到着するのは孫の代。
当初は問題なく進んだが10年経過後、クリストファーとザックは彼らが毎日飲む飲料ブルーの中に欲望を抑える薬が入れられていることを知る。彼らはその薬を飲むのを止める。
そして乗員の中に本能のまま、暴走するものが出始める。
ストーリーっていうかあおり文句(宣伝文句)で感じたこと
この映画のストーリーは、宇宙船の中にほぼ少年少女だけの組織が作られており
薬物によって従順になる様に抑えられていた乗員が17-18歳くらいになって、薬物の影響が除かれた時に自我と本能に目覚め、扇動者によって暴走が始まるというものです。
宇宙船の外にエイリアンがいて、それと戦うって展開を期待していた方には肩透かしかも知れません。
まあ、それだと「エイリアン」系の素晴らしい映画がたくさんあって、たんなるB級になるんですけどね。
それにしてもエイリアンの影を匂わせすぎ!
意味があるとしても誤解を与える表現になっているかも知れないと思います。
モチーフはウィリアム・ゴールディングの「蠅の王」?
「蠅の王」は私、GAKUTENも中学生の頃読みました。素晴らしい作品ですよ。
蠅の王というのは悪魔の名前、サタンに次ぐ力を持つ魔王ベルゼブブ(作品によってまちまちですが)の名前です。
本のタイトルが如何にも中二的でしょ。たぶんそれに惹かれて読み始めたんじゃないかと思います
ウィリアム・ゴールディングさんはイギリスの作家ですが、凄い方でノーベル文学賞を受賞され、ガイア理論という名前を付けた方です。
「蠅の王」はジュール・ベルヌ(私が天才と思っているSFの生みの親)の「十五少年漂流記」をモチーフにしたものです。
十五少年漂流記が冒険もので子供にも読んで欲しい本となりますが、(私も小学生の頃、少年文学集で読みました)「蠅の王」はまったく打って変わって悲劇的であり人間の本能を暴いた作品と言えるでしょう。
「蠅の王」の超あらすじ
・戦争から逃れる為に子供たちを飛行機で疎開させるが海に墜落。南の島にたどり着く。
・大人は全滅。
・ラルフとピギーを中心に規則を作り始めはうまく行く。
・島の中に「怪物」がいるという噂が流れる。
・ラルフと中の悪かった少年ジャックは狩猟隊を作り好き勝手を行う。
・ある事件がきっかけにジャックが反旗を翻す。食料を抑えている彼らに多くの仲間がラルフから奪われる。
・ラルフの唯一の味方ピギーが狩猟隊によって殺され、ラルフも命を狙われる。森の中を逃げ回る。
・狩猟隊の放った火によって森が燃える。その火がきっかえで救助隊に発見されラルフを始め少年たちが救助される。
「蠅の王」との比較(ネタバレ注意!)
こうして重要部分だけをピックアップして見ると、「ヴォイジャー」のストーリーは「蠅の王」そのものと言えます。
・戦争から逃れる為に子供たちを飛行機で疎開させるが海に墜落。南の島にたどり着く。
⇒宇宙船の中の閉鎖環境。
・大人は全滅。
⇒リチャードの死による子供達だけの社会。
・ラルフとピギーを中心に規則を作り始めはうまく行く。
⇒クリストファーとセラの組織形成。
・島の中に「怪物」がいるという噂が流れる。
⇒船外にエイリアンがいるという噂。それをクリストファーが持ち込んだというザックの扇動。
・ラルフと中の悪かった少年ジャックは狩猟隊を作り好き勝手を行う。狩猟隊は食料を抑える。
⇒ザックが食糧室を抑え好き勝手に振る舞う。
・ある事件がきっかけにジャックが反旗を翻す。彼らに多くの仲間がラルフから奪われる。
⇒ザックの反乱。クリストファー側のメンバーが寝返る。
・ラルフの唯一の味方ピギーが狩猟隊によって殺され、ラルフも命を狙われる。
⇒クリストファー側の少女が撃たれて死亡。
・狩猟隊の放った火によって救助隊に発見されラルフを始め少年たちが救助される。
⇒結果は観てのお楽しみということで。
要するに
「蠅の王」の舞台を宇宙に変えただけとも言えます。
ウィリアム・ゴールディングは「十五少年漂流記」を「蠅の王」という全く異なったストーリーに変え、素晴らしい作品を作りました。
映画「ヴォイジャー」は「蠅の王」をモチーフに何か変革をもたらしたかどうかですね。
それは自分で判断してみて下さいね。
取り敢えず冒頭の答えですが
人類の存亡を脅かす敵は無限に広がる宇宙にいるのか。それともー。
⇒自分たち自身の心にあるのか?
って感じでしょうか。
SF映画としての「ヴォイジャー」
映画「ヴォイジャー」では外宇宙に人類が居住できる惑星を発見。
そこに3世代かけてたどり着こうという計画です。
恒星間旅行について、超簡単に書いてみました。
恒星間航行
ご存じの通り現代の科学力では光速を超える速度をだすことはできません。
仮に加速を無限にエネルギーを供給することができるとして、光速に近づけば近づくほどローレンツ変換によって質量が無限に増大するからです。
無限に質量が増大するものを加速できないのは何となくそうかなって分かりますよね。
船内の時間は遅くなるので船外では何百年も経っているけど中ではほとんど時間が経っていないという現象「ウラシマ効果」が発生します。(ウラシマ効果は日本でしか通用しない名称なので注意)
これは素粒子の崩壊を観測することで証明されています。
目的地に着くのに何万年もかかっていては、話として面白くないのでSFとかコミックではワープとか空間を曲げる恒星間航行が考え出されたのですが、もちろん現代科学を大きく超えた技術です。
超大まかにいってSF界では恒星間旅行をするための速度は次の3つになります。
①超光速
ワープとかいろいろと呼び方はSFやコミックで異なる。特にコミックではもっとも多く取り入れられる。宇宙戦艦ヤマトも波動エンジンによるワープ航法で恒星間を飛び越えます。
「トップをねらえ!」だとワームホールを利用だったと思う。
ワームホールはブラックホールとホワイトホールをつなぐ方法。ブラックホールは実在しているがホワイトホールは観測されていないと思う。
昔はクエーサーがそうだと言われたこともあるが、クエーサーは活動銀河ということで落ち着いているはず。
②亜光速
光速は越えられないけど、光速に近い速度で飛ぶ。ウラシマ効果が発生する。
③現代の物理法則の範囲の速度
太陽系を脱出できる加速は必要です。
物凄く時間がかかるので下記の様な方法が必要になってきます。
ワープを使わない恒星間旅行(世代宇宙船)
現代の科学力では太陽圏内ならともかく、他の恒星系に3世代やそこらでたどり着く技術はありません。
もっとも近い恒星はプロキシマケンタウリ 距離は4.3光年、すわなち光の速度で4.3年かかります。でもって赤色矮星です。(おじいちゃんの星です)
ただ、このプロキシマケンタウリには惑星があることが確認されています。
いまや惑星というのが珍しい存在ではないのです。但しここでの生物の存在は絶望的。
そんなプロキシマケンタウリに行くのも太陽系を脱出できる加速度で向かったとして7万7千年の時間がかかります。
だったらどうするか。
SFでは昔から色々考えられています。
①コールドスリープ
寝ている間に反乱を起こしたコンピューターがHAL9000。
②遺伝子だけ持っていく
③何世代もかけて航行する
主にこの3つのパターンです。コールドスリープが多いパターンですかね。
「2001年宇宙の旅」は木星(だったよね)に向かう惑星間航行ですが、このパターンでしたよね。
何世代かかけて有人の恒星間宇宙船で他の惑星に向かう。
そんな宇宙船が出てくる作品はSF作品でもちろんあります。
私の好きなSF作家ロバート・A・ハインラインの「宇宙の孤児」にも世代宇宙船の話はあるらしいのです。
アイザック・アシモフの作品「ネメシス」にもあります。
ネメシスだと何世代もかけている内に当初の目的が分からなくなって生活している人々は宇宙船の中にいるのも知らず、中世にもどったような生活をしているというものです。
余談になりますが、「星界の紋章」シリーズには宇宙航行に適応させるために遺伝子操作をされた種族アーブが出てきます
森岡浩之氏によるSFライトノベル「星界の紋章」シリーズは累計200万部を売り上げた人気シリーズ。
大好きでしたね。
今も全巻持ってます。
そこに出てくる宇宙帝国はアーブと言うハーフエルフの様な種族によって作られた国家なんですが、遺伝子操作によって長命や空間認識力など宇宙に適応する能力を加えた人工的に作った人種です。主人公はジント・リンという人間の少年。
ヒロインがアーブのプリンセス、ラフィール。
とにかくラフィールが可愛くて。
「ヴォイジャー」SF考証的にどうよっ!てのは正直ある
3世代というのは、目的がなんとか伝わるぎりぎりの範囲だと思います。
それ以上だとネメシスの様になってしまいます。
だとすれば、必要なのは様々なコンティンジェンシープラン。
コンティンジェンシープランは、大企業では検討されており、私が以前在籍していた企業でも検討されていました。
そこそこの時間は私の業務もそこに費やされていました。
巨額の投資を伴っているはずの国際的プロジェクト。そのプロジェクトにコンティンジェンシープランがまったくなされていないのが不思議ですよね。
そんなはずはないと思うのです。
コンティンジェンシープランとは
コンティンジェンシープランとは、「予期せぬ事態に備えて予め定めておく緊急時対応計画のこと」です。
この30人の少年少女は幼少期からこの計画の為に育てられました。
「蠅の王」や「十五少年漂流記」の様に生まれも育ちも違う寄せ集めの集団ではありません。
求められるのは、発生する様々な緊急事態に備えた「判断力」と「行動力」はもちろん、「秩序ある組織性」を保つことは明白です。
子供から育てた理由に地球や親に対する郷愁がないことを理由に挙げていましたがもっとも大きいのは一貫した教育ができることは明白です。
まあ、洗脳と言い換えてもいいかも知れません。
だって個人の欲望や本能による欲望を薬物で抑える以上に重要なのは教育による意識の植え付けですよね。
組織重視の倫理観を育てていないのが不思議でなりません。
そもそも分かり易い形で薬物を与えていることも、分かった場合の対処もお粗末としかいえません。
対処プランがあったはずですがリチャードが忘れただけ?
武器の保管庫が人の力で物理的に開くのもどうかな。
セキュリティが弱すぎ。
まあ、SF作品に突っ込みどころが多いのはよくあること。なので不思議には思いましたが目くじらは立てていません。
あの名作「DUNE」だって恒星間航行のメカニズムはよく分かりませんし。
目的地に近づく段階になると逆噴射によって減速しないといけない!
恒星間航行は前半の行程で加速を続け、中間点以降は逆に減速が必要になります。
最初にこのポスターを見た時に、目的地に到着する際にはエンジンは前になるのでおかしいのでは
と思ったのですが、目的の惑星に近づいて再度船体を回転させたと見ればいいことに気が付きました。
または、前後に同じ能力をもつエンジンを備えることで対応できます。
目的地は地球に似た水の豊富な惑星の様です。
これが「ウラシマ効果」によって何百年もの時間のずれが発生した未来の地球だという落ちだと「猿の惑星」なんですけどね。
その時、惑星の周りのリングは月が崩壊したもののということです。
誰か『宇宙船ビーグル号の冒険』の様なわくわくする冒険ものを映画にしてくれないかな~。
そんな時は文句なく(やっぱいうかな)見ると思うんですけど。
最近はいいスペースオペラがないんだよな。
スターウォーズシリーズが名作過ぎるのかな。
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